こんにちは、LifematicsのCTO室の松本です。LLM(大規模言語モデル)を利活用したアプリケーションの開発やコンサルティング業務を担当しています。
今回は、Microsoftの Copilot Studiioを使って、Teams 上で動作する社内向けチャットボットの構築手順をご紹介します! 弊社内で利用しているコミュニケーションツールがTeamsということもあり、社内規定などを回答してくれるチャットボットがTeamsから利用できたら便利だなーというきっかけで本記事を作成しました。
このチャットボットは生成AIがSharePoint Online に保存されたドキュメントを自動的に検索し、引用付きで回答してくれるRetrieval Augmented Generation(RAG)の機能を搭載しています。 「社内ナレッジの共有を効率化したい」という方におすすめの内容です。
RAGとは?
Retrieval Augmented Generation(RAG)とは、ユーザーの質問に対し、あらかじめ用意した文書群から関連する情報を検索(Retrieval)し、その内容を元にAIが自然な回答を生成(Generation)する手法です。この仕組みにより、AIの回答精度や信頼性が高まり、企業内のドキュメントに基づいた具体的で正確な応答が可能になります
Microsoft Copilot Studio とは?
Microsoft Copilot Studio は、Microsoft が提供するローコード開発環境で、Teams や Slack などのコミュニケーションツール上で動作する、チャットボットをはじめとした各種AIエージェントを簡単に構築できるツールです。Power Automate や Power Apps などの Microsoft 365 の各種サービスとも連携し、業務プロセスを自動化することができます。
※ Copilot Studio 自体の利用開始手順については割愛します。公式ドキュメントなどをご参照ください。
※ 本記事は 2025 年 5 月時点の情報を元に作成しています。UI や機能は現在もかなりの速さで更新されているため、スクリーンショットなどは参考程度にご覧ください。
手順1. チャットボットの作成
まずはCopilot Studio上で、チャットボットをエージェントとして作っていきます。
Copilot Studio の URL にアクセス:https://copilotstudio.microsoft.com/
左のメニューバーから「作成」を選択し、作成画面から「新しいエージェント」ボタンをクリックします。
チャット画面が立ち上がり、どのような エージェント を作りたいかを日本語で入力できます。ただ、現時点ではまだプレビュー段階の機能であり、実際に試してみてもRAG用の設定などは行われなかったため、今回は手作業で設定することにします。設定に進むために、右上の「構成に進む」ボタンをクリックします。
エージェントの設定画面が立ち上がるので、名前やアイコン、説明、指示を入力します。今回は弊社のマスコットキャラクターであるセルルンを設定してみました。
ページ下部の「ナレッジの追加」から、SharePoint を RAG の情報源(ナレッジ)として追加します。ナレッジの指定は URL で行いますが、この URL は https://<組織ドメイン名>.sharepoint.com/sites/<サイト名> の形式で指定します。https://example.sharepoint.com/sites/example1/example2 のように、サイト名がネストしているものも指定できます。 (なお、URLの末尾に「/」をつけるとエラーになりました。ご注意ください)
設定ができたら、右上の「作成」ボタンをクリックして エージェント を作成します。作成が完了すると、エージェント の概要画面に移動します。
右側の「エージェントをテストする」から、早速作成したエージェント(チャットボット)のテストができます。回答内容には社内情報も含まれてしまうため伏せています(水色の部分)が、無事に参考文献ありの回答ができていることを確認できました。
※最初に表示される「こんにちは、私は仮想アシスタントの〜」の部分は、「トピック」の中の「会話の開始」で変更することができます。 「トピック」とは、ユーザーがチャットボットに質問や指示をしたときに、それに対してどう回答するかを決める会話のシナリオのことです。具体的な質問やキーワードに対応して、適切な情報を提供したり、次のアクションへ誘導するための設定をすることができます。
以上で、チャットボット自体の作成は完了です。次に、Teams から利用するための準備を行います。
手順2. Teams への追加
Teams での追加に先立ち、まずチャットボットを「公開」する必要があります。右上の「公開」ボタンをクリックして公開します。
- ※ここでいう「公開」は、Copilot Studio 上で新しいバージョンとして変更を反映することであり、別に一般に公開されてしまったりするわけではありません。おそらく英語の Publish の直訳と思われます。
- ※ここでいう「公開」は、Copilot Studio 上で新しいバージョンとして変更を反映することであり、別に一般に公開されてしまったりするわけではありません。おそらく英語の Publish の直訳と思われます。
上部メニュータブから、「チャネル」を選択します。接続できるチャネルの一覧が表示されます。メールやSlackにもつなげられることがわかります。
チャンネル一覧の中から「Teams と Microsoft 365 Copilot」を選択すると、設定用のサイドバーが開きます。
サイドバーに表示されている「詳細の編集」をクリックすると、アイコンや背景色を設定できます。設定してから「保存」をクリックします。 ※なお、ここで設定するアイコンはチャットボット自体のアイコンとは別に設定する必要があります。
次に赤枠部分の「可用性オプション」の部分をクリックします。
メニュー下部の「ストアに表示する」の中から「組織内の全員に表示する」をクリックします。
メニューの一番下の「管理者の承認のために送信する」をクリックします。
ここでTeamsに表示できるようにすることに関して、管理者に承認してもらう必要があります。Teams の管理者ユーザであれば、統合アプリ にアクセスすると「要求されたアプリ」のタブに、今回作ったチャットボットの名前が表示されているので、承認を行います。
承認が完了すると、Copilot Studio の方の表示が切り替わります。これで無事に Teams 上で利用できる状態になるので、「リンクのコピー」から利用リンクをコピーしてブラウザで開いてみましょう。
Teams が立ち上がり、作成した チャットボット が表示されます。「追加」をクリックします。
話しかけてみると、無事に回答が返ってきました!(ここも、回答内容は社内情報に関わる部分がるため伏せていますが、水色の部分に内容が表示されています)
※ なおこのスクリーンショットでは設定したアイコンが反映されていませんが、設定の反映に時間差があるようで、私が試したときには1時間くらい経ったら反映されました。
試してわかったこと
- 現時点での制限事項
- MS Loop で管理しているドキュメントを RAG の情報源として追加したかったのですが、現在のCopilot Studio 上では直接はできないとのことです。この点は本当に早く対応してほしい・・・!
- ローコードで作成できる事自体はありがたいのですが、まだまだ不安定&かゆいところに手が届くようにはなっていない印象です。また、Copilot Studio 自体の動作が割ともっさりして感じるときもありました。
- SharePoint 上のドキュメントに関しては、現状でファイルタイプとしては Word, PowerPoint, PDF あたりしか正式にサポートしていないようです。Excel も回答の根拠にしてくれることはありますが、私が試した範囲では他のファイルタイプに比べてかなり不安定でした。ファイルサイズに関しても、7MB 以上のファイルはインデックスを張れないようです。
- 特にうれしかったこと
- 何はともかく簡単に作れる!すぐに使える!というのが一番の感想です。特に、RAG の情報源として SharePoint Online を指定できるのは、社内ナレッジベースを活用する上で非常に便利です。
- Teams 上で動作するため、社内の人たちと気軽に情報共有ができるのも良い点です。
今後も弊社はCopilot Studio をはじめとした生成 AI 関連技術を活用し、社内ナレッジベースの活用や業務プロセスの自動化に向けた取り組みを進めていく予定です。興味がある方はぜひご連絡ください!